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コラム

投資家のココロに響くストーリー
3)ストーリーに立ちはだかる壁と、その先にあるものとは

2014/06/16

野村インベスター・リレーションズ
コンサルタント 近藤 正哉

連載第1,2回では、ストーリーの重要性についてご紹介してきました。
(連載第1回:「今のIRにはストーリーが足りない!」)
(連載第2回:「企業価値を伝えるストーリーコンテンツ」)

今回は、少し視点を変えて、実際にストーリーを構築する際に立ちはだかる「壁」についてお話します。
「壁」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、企業として統一されたストーリーを作り、投資家に企業価値を正しく伝えていくためにも、「壁」とは一体何か、そして如何にして乗り越えていくのかを考えていきたいと思います。

ストーリーに立ちはだかる壁

<壁その1>投資家との間に生まれる「ギャップの壁」

これまでIR活動に携わってこられてきたなかで、投資家の方々に「こちらが伝えたいメッセージがなぜか伝わらない」「事業や戦略について、もうひとつ理解してもらえない」「なにか誤解されている」と感じたことはありませんか?

それは、企業と投資家の方々の間に大きな「ギャップ」が生まれているからです。

投資家に対して自社を紹介するにあたって、IR担当者の皆さまも「わかりやすく伝えよう」ということを心がけていらっしゃると思います。それでも、実際に説明が行われているシーンや説明用資料を拝見すると、専門的な用語や、業界の方にしかわからない言葉や常識が知らず知らずのうちに用いられていることが意外と多いのです。入社後何年も何十年も同じ業界でキャリアを積んできている業界のプロフェッショナルですから、ご自身でも気付かないうちに業界の常識や、普段当たり前のように使っている言葉、業界用語が出てきてしまう、ということもあるのでしょう。

また、「投資家の方々」とひと口に言っても、さまざまな業界でキャリアを積み、それぞれの人生経験を持っておられる方々がいらっしゃいますので、100人いれば100通りの常識、受け取り方があると考えるのが自然です。

ですから当然受け取り方にもギャップが生じるはずで、重要なのはそれをきちんと認識できているかということです。これを念頭に置いたうえで限りなくニュートラルな目線で対話をしていかないと、いくら丁寧に説明をしても伝わらない、理解されないという事態に陥ってしまうことになります。

このギャップを埋めることは、頭では理解できても実際には非常に難しく、ストーリーづくりの第1の壁として立ちはだかることになるでしょう。

<壁その2>最大の障害「組織の壁」

「ストーリーコンテンツ」は、企業の事業や戦略、考え方をストーリー化して企業価値をしっかりと投資家に伝える、まさに「顔」とも言うべきコンテンツです。
だからこそ、IR部門で主導するとは言っても、なかなか単一部署だけですべての作業を進められるわけではありません。各事業について画像等の資料提供、記載内容のチェックをしてもらうこともありますし、IR担当だけではわからない、リアルな現場の事情について取材が必要なこともあります。ストーリーコンテンツを作るうえで、各事業部門やセクションとの連携は必要不可欠です。

しかし、当然のことながら各部門の担当者の方々は、自らの立場・視点・常識で意見をあげてきます。
「自分たちの部門の扱いが他部門に比べると少ない」「(掲載予定の企業の取り組みについて)取り組んでいるのは確かだが、まだ不確定要素が大きいので出してもらっては困る」・・など様々な意見が寄せられるでしょう。

そのため、せっかく自社のためにストーリーを作ろうとしたのに組織のパワーバランスに押し潰されてしまい、当初意図したものと違ってしまったり、途中でとん挫してしまうということは決して珍しいことではありません。
組織の壁をどう突破するのか、これもストーリー作りにおいて大きな壁と言えるでしょう。

壁を乗り超える秘訣、「客観視」

ストーリーを作るうえでの2つの大きな壁をご紹介しましたが、そんなに大変なんだったら、自社でストーリーなんて作れないよ・・・とあきらめてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、この壁を乗り越えるための基本であり、もっとも重要な秘訣をご紹介します。

その秘訣とは、「客観視」です。つまり、社内の都合や意見で軸がぶれないように、常に第三者の視点・客観的視点を持つ、ということです。拍子抜けするほどシンプルですが、これを保ち続けることが大変に重要な意味を持ちます。

1つ目の「投資家とのギャップの壁」については、客観的視点で「企業独自の常識」を洗い出して検証、投資家の、あるいは一般の生活者の目線に立って専門用語や企業独自の言いまわしを共通言語に変換したり、伝わりやすい説明方法を組み立て直していくことが重要です。
2つ目の組織の壁については、社内の都合など内々の話に終始するのではなく、「投資家との対話」という本来の目的達成に向けてしっかりと課題や意図を社内のプロジェクト関係者で「共有」し、客観的視点をベースとした説得ができれば、突破口への糸口になるでしょう。

しかしこれは「言うは易し、行うは難し」かもしれません。
ストーリーは当然もともと企業自体の中にあるはずのものですが、企業が成長するにつれて様々な要素が絡み合い複雑化していく中で、その渦中にいる社員がしがらみにとらわれることなく客観的視点を保ち続け、ストーリーを作っていくのは非常に困難です。

自分たちだけだと難しい場合は、第三者に協力を依頼することも大きな近道となるでしょう。第三者による客観的視点を一つの指標とし常にそれと照らし合わせながら進めていくことで、ひとりよがりにならない、伝わる「ストーリー」を紡ぎだすことができます。

壁の先にあるものとは?
ストーリーづくりがもたらす大きな価値

これまでの内容で、そんなに負荷をかけてもやる必要あるの?それならやめようかなと思われた方、ちょっとお待ちください。ストーリーは、その困難さと比例して、企業にとって重要な効果をもたらすことになるのです。今までの連載では投資家に企業価値を伝えるのに重要だとご説明しましたが、それとはまた違う切り口での重要な役割も担っています。

実際の例として、ストーリー策定のプロジェクトを通じてIR担当者の皆さまから頂いた声をご紹介します。

■企業の価値・魅力の再発見
・メッセージを届けるべき個人投資家の視点(普遍的な視点)で自分たちの事業を見つめなおすだけで、今まで自分たちでも気付かなかったような強みや魅力を再発見することができた。
■企業内で同じビジョンを共有するきっかけとなった
・自社への見方について、社員毎でも大きなズレがあったものが、明確な共通認識を持つことができたことによって、投資家に対し、関係者が同じメッセージを届けることができた。
・各部署と連携することによって、部門間を超えた共通認識を持つことができ、IRだけでなく企業として統一された「One Message」を持つことができた。
・なぜこういうものが今までなかったんだろうという声とともに、他部署からもストーリーを使いたい(採用やインナーブランディング、営業など)という引き合いが増えた。

いかがでしょうか?

これはほんの一部の声ですが、ここからも読み取れる通り「ストーリー」作りは、プロジェクトを直接担当される方以外の社員の皆さまにとっても、ゼロから会社を見直し、会社の本当の強みとは、投資家への魅力とは何なのかを知る、重要な作業なのです。

統一された明確な企業ストーリーは、IRだけではない大きな価値をもたらす

ストーリーづくりは決して楽なものではありません。
皆さまはまさに、企業のストーリーテラーとも言うべきポジションにいらっしゃると思います。紡ぎ手として、今までとは全く違う切り口で自社の企業価値を伝える「ストーリー」を作り上げるわけですから、当然様々な壁に当たるでしょう。しかし、現在のIR活動に課題を持たれていて、なかなか解決できないままでいるのであれば、今までのやり方を一旦リセットし、先入観を捨てて今一度自社のこと、メッセージを届けるべき投資家の方々のことを見直してみる必要があるのではないでしょうか?

自社の「ストーリー」を作ることは、その非常に良い契機になるはずです。そうして生み出された自社ならではの「ストーリー」は、IR担当者の皆さまの心強い味方になってくれることでしょう。

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