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コラム

投資家のココロに響くストーリー
2)企業価値を伝えるストーリーコンテンツ

2014/05/09

野村インベスター・リレーションズ
コンサルタント 近藤 正哉

連載第1回で、「IRにはストーリーが足りない」「自社の魅力を投資家に伝えるストーリーコンテンツが必要だ」とお話をしました。
(連載第1回:「今のIRにはストーリーが足りない!」)

今回は、「一体ストーリーコンテンツって何?」「本当に必要なの?」と思われた方に、IR活動に必要な戦略から、ストーリーコンテンツを作る意味やそこに必要な構成要素についてまでをご紹介したいと思います。

IRにおいて重要となるマーケティング戦略

ストーリーの話に入る前に、まずはIR活動において重要であるマーケティング戦略についてお話しなければなりません。

マーケティング戦略とは一般的に、顧客が商品を認知し、興味・関心を抱き、比較検討を通じて購買に至るまでの意思決定プロセスを想定し、目標を達成するためにそれぞれのコンタクトポイントにおいて有効な施策を考える、というものです。ここで重要となるのが、パーチェスファネルというフレームワークです。(マーケティングの基礎的フレームワークの一つで、プロセスの流れを指してカスタマー・ジャーニーとも呼ばれています)

※パーチェスファネルとは、AIDMAモデル(広告宣伝における消費者の心理プロセス)の発展形で、消費者の購入までの意識の遷移を示したもの。この階層には諸説ありますが、代表的なもののひとつとして下記の図をご覧ください。

IRに置き換えて考えると、貴社のことを全く知らない投資家、名前は知っているが詳しい事業内容まではよく知らない投資家、ウェブサイトに訪れ投資を検討している投資家など、投資に至るプロセスのなかで、一体どのレベルにいるのかによっても、必要な施策や告知の手段、ヒットする情報は大きく異なるはずです。

マーケティングというと、どうしてもマスプロモーションを中心とした、商品なりサービスを買ってもらうための戦略という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、NISAによる投資家層の広がりと多様化、スマートフォンやタブレット端末の普及による閲覧環境の多様化といったように、個人投資家としてひとくくりにしてしまうアプローチが難しくなっている現在のIRにこそ、確固としたマーケティング戦略を踏まえて、効率的に取り組んでいくことが必要ではないでしょうか。

「ストーリーコンテンツ」はIRにおけるマーケティング戦略の核

「ストーリーコンテンツ」とは、企業の事業や成長戦略などを系統立てて説明し、企業価値が伝わりやすいようにコンパクトに整理した「ストーリー」を、ウェブサイト上に最適化したものです。

投資家向けのストーリーというと、「コーポレートストーリー」を思い浮かべる方も多いと思います。ただし、このコーポレートストーリーは基本的には機関投資家に向けて作られるもので、内容も難しく、万人に受け入れやすいものではありません。そこで、「一般の個人投資家の方にもわかりやすい企業ストーリーを作り、コーポレートコミュニケーションの核になるコンテンツにしよう」という意図のもと、かねてより私たち野村IRが提唱し、取り組んできたのが「ストーリーコンテンツ」です。

前回のコラムで、たとえ話として洋服を扱うブランドショップのお話をしました。例えどんなに素敵な洋服を揃えていたとしても、ハンガーに一緒くたに掛けられているだけでは売れるものも売れません。流行やイチ推しの商品を一際目立つようにディスプレイしたり、そのブランドらしさを感じさせる品揃え、内装を工夫したりすることで、お客さまはそのブランドに共感し、商品を購入するのです。

IRにおいてもこれと同じことで、いくら業績や配当が良いからといって、投資家はそれだけで投資を決めるとは限りません。今の業績は良さそうだけれども、それが一時的なものなのか、今後も成長が見込めるものなのかは、数字を見ただけでは必ずしも判断できない場合も多いからです。ひょっとしたらたまたま何かのブームに乗っただけであるとか、大災害や大きな事件などの影響で一時的に業績が上向いているという可能性だってなくはないのです。

投資対象となる企業の理念やビジネスに共感し、戦略に心底納得することができるか。
投資家の方々にとっては、大切な資金を託すわけですから、投資するに足る企業であるのかどうかを厳しい目で見ています。業績や配当、各種資料などを提供して理性的に判断を促すことも重要ですが、一方で人を“動かす”ためには企業への「共感」「納得」といった情緒的な面もおろそかにすることはできません。

そこで、「ストーリーコンテンツ」を媒介としてそのような投資家の方々の疑問や不安を解消し、興味・関心を惹き寄せて企業への共感(=ロイヤルティ)を向上させる、マーケティング戦略を仕掛けていこうというわけです。
図2のように、「ストーリーコンテンツ」は、前述のパーチェスファネルにおいて企業への共感を高める重要な役割を果たしているのです。

ストーリーを構成する要素

では、ストーリーコンテンツには、実際どのような要素が必要なのでしょうか。

ストーリーに入れるべき情報は、業種や規模、歴史や、市場のなかでのポジションによっても違ってきますが、大まかにご紹介すると下記のようなものです。

「なんだそんなものか」「それならうちの会社のサイトにもある」と拍子抜けされましたか?

それくらいのものなら自分たちでもすぐにできると思われたでしょうか。
ところが、実際に経験されたことがある方ならばおわかりかもしれませんが、これがなかなか一筋縄ではいかない難物なのです。
私たちも、「投資家に向けて事業や戦略を紹介するコンテンツを自分たちで作ってみたものの、どうしてもうまくいかない」というIRご担当者からの切実なお悩みを頂戴することが、実に多くあります。

こうしたコンテンツは、ともすると「企業が伝えたいことを一方的に掲載しているだけ」の内容になってしまう危険性も孕んでいます。図3で挙げた要素を、いかに一つの「ストーリー」として、シンプルに分かりやすく伝え、投資家の納得や共感を得られるか、が非常に重要なのです。

投資家の心に刺さるストーリーを作ることができるかどうかは、企業の価値を正しく伝えられるか否かに直結します。

そして、このようなストーリーにつなげるプロジェクトにおいては、非常に困難な壁が立ちはだかっています。
いくつか原因は考えられるのですが、その最大の原因となるものが「組織の壁」そして「プロであるがゆえの落とし穴」です。

この言葉でピンとくる方もいらっしゃるかと思います。では、この壁とどう向き合っていけばいいのでしょうか。

次回、第3回目では「ストーリーに立ちはだかる大きな壁」についてご紹介します。

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