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コラム

投資家のココロに響くストーリー
1)今のIRにはストーリーが足りない!

2014/04/01

野村インベスター・リレーションズ
コンサルタント 近藤 正哉

「このウェブサイトを見て、本当にこの会社の株を買いたいと思うのかな」

それが、多くの上場企業のIRページに感じた第一印象でした。

「とにかくわかりやすく、インパクトを持って伝える」ことが絶対である広告業界に長くいた私にとって、難解な専門用語が当たり前にように飛び交うIRの世界に、当初は随分とカルチャーショックを受けたものです。

IR支援コンサルティングという仕事柄、様々な企業のウェブサイト、IRページの分析を行うことになるわけですが、そこで抱いた印象が冒頭にある通りの言葉であり、その印象は現在に至るまで大きくは変わってはいません。企業や業界に対する知識を一度横において虚心坦懐に見てみると、その企業が何を考え、どこを目指しているのかがまるでわからないというページが非常に多かったのです。

ではそこに足りないと感じたものとは一体何でしょうか。

このコラムでは、「個人投資家から見た企業のウェブサイトには何が足りないのか、そして一体何が必要なのか」というテーマで皆さんとともに考えていきたいと思っています。

訪問者の行動を「デザイン」する

顧客に向けたウェブサイトに求められるのは、訪問者の行動をデザインすることです。ありていに言えば、商品を売るための仕組みを作ることだと言えるでしょう。ECサイトなど売上に直結するようなサイトでは、商品購入に至るコンバージョン率を上げるなど、売上向上という明確な目標達成のためにあらゆる工夫が施されています。

こうしたサイトでは、

  1. ①目的を明確にし、目標を設定する
    商品購入や資料請求、問い合わせなどの目的を設定し、それを達成するための目標を立てる
  2. ②目標を達成するために必要な仕掛けを作る
    興味を持ってもらい、クリックさせるための仕掛けやコンテンツづくり、サイトの整備を行う
  3. ③訪問者数を増やす
    広告出稿やメールマガジン、イベント等さまざまな手法による告知を行い、訪問者母数を増やす
  4. ④効果測定
    どれだけ購入につながったかの成果を検証する
  5. ⑤検証結果を踏まえた改善
    達成された成果やどこから来て、どんなところに興味を持って見ているか、または離脱しているかなどの訪問者の行動分析を踏まえ、より高い成果に向けた改善を行う

というPDCAサイクルを基本としています。

ウェブサイトは生き物であり、成果を上げるためには一度作って終わりではなく、常に進化し続けることが必要なメディアなのです。

ところが、これがIRページとなると、確かに情報量は充実しているものの、実際のターゲットである投資家の行動を意識し、分析してきちんとこのPDCAサイクルを回しているというケースにお目にかかることは滅多にありません。悲しいかな、一度作ったらニュースや適時開示情報などの更新以外は随分前に作ったまま、改修もされずに放置されている状態であることも珍しくないのが現実です。

訪問者の行動をデザインするという観点から運営がなされていないのです。

明確な目標を作る(KPIの設定)

「ECサイトとIRのページは違うから」
そう言われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、IRのページでは、適時開示情報などを正確に、公正に投資家に提供することが第一義で、サイト上で商品の購入までを行うECサイトとは位置付けが違うという見方もできます。

問題はまさにここにあります。
直接の顧客に向けたウェブサイトではこうしたPDCAを構築し、より高い成果を追求している企業でも、このような考え方からIRとなると途端に成果を求めることをやめてしまう場合が多いのです。

ウェブサイトを作り、整備することは最終目標ではないはずです。
ECであれIRであれ、ウェブサイトの価値は、訪れた訪問者があなたの会社に対してどれだけの貢献をしたかで測られるものです。

IRページの場合はサイト上で直接商品を購入するわけではありませんから、KPI(重要業績評価指標)としては、投資判断をするうえで重要な情報ページにどれだけたどりついたか(該当ページへのアクセス数)、あるいはIR情報を知らせるメール配信への登録数などを設定するケースが多く見受けられます。
いずれにしても、どれだけ価値のある訪問者(投資家)を呼び込むことができたのかということが重要であり、IR活動を評価するうえでのひとつの成果指標となるのは間違いありません。

IRに足りないものは、「ストーリー」

冒頭でも触れたように、多くの企業のIRページは私にとっては非常にとっつきにくいものでした。では、一体何が足りないと思ったのか?

それは、ひと言でいえば「ストーリー」です。

ここ数年は、広告業界のみならず、ビジネスシーンにおいても「ストーリー」という言葉が盛んに使われるようになりました。
これは、企業側から一方的に商品の良さを押し付けるのではなく、実際の消費者にとって「自分ゴト化」できるストーリーを作り、広告のみならず、さまざまなコミュニケーション手法を通じてその「ストーリー」を伝える。これによってエンゲージメントを高めていくというものです。
IRにおいては、まさにこの「ストーリー」が足りていないのではないかと、そう思ったのです。
一般的な企業のIRページを訪れると、IRニュース、財務ハイライト、IRライブラリ、IRカレンダー、株式情報などが並んでいます。どれも重要な情報であるのは間違いありません。
でも、これらの情報を並べただけでは、単なるアーカイブ(倉庫)的なページができて、それでおしまいです。

お店に例えてみましょう。
あなたの会社のブランドに興味を持ったお客さまが、店舗に足を運んでくれました。数多あるブランドのなかからあなたのブランドを選んでくださったのですから、そのお客さまはあなたの会社にとって、とても大切なお客さまです。店舗には、色とりどりの素敵な洋服や小物が整然と並べられています。
でも、ただそれだけなのです。

考えてもみてください。お店を訪れたはいいものの、店員は「いらっしゃいませ」と言うでもなく、流行の洋服を勧めてくれるでもない。まるで「勝手に見て、まあ興味があったらお買いなさい」とでも言っているような―
そんなお店、二度と行きたいと思わないですよね。

極論に聞こえるかもしれませんが、とどのつまり、単に情報を並べただけのIRページは、お客さま対応をまるでしないお店と同じ状態か、もしくはそう思われる可能性があるわけです。

IRページにとって、お客さまをお迎えし、「いい会社だな」と思ってもらい、投資意欲を高めてもらう機能を果たすものこそ、企業が投資家に対して自社の事業や戦略を系統立てて語るための「ストーリー」に他なりません。

IRページのカギは、「いかに自社の魅力を分かってもらうか」

もちろん、こんな例ばかりではありません。
最近では、個人投資家向けにもストーリーを作り、特に見てほしい情報をまとめて見やすくしたり、自社を紹介するコンテンツを設けるケースも多くなってきました。

ウェブサイトというのは、判断のすべてを訪問者に委ねるメディアです。ページの隅から隅までくまなく読んでくれる訪問者など、まず期待できません。このため、いかに短時間で効率よく自社の魅力をわかってもらうかがIRページを作るうえでの生命線となります。

そこで登場するのが、前出の「ストーリー」をホームページ上に最適化して掲載する「ストーリーコンテンツ」という存在です。

次回の第2回目では、「ストーリーコンテンツとは何か」についてご紹介します。

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