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コラム

企業の価値創造プロセスを伝える「統合報告」とは
1)非財務情報の重要性の高まりと統合報告の背景

2014/04/01

野村インベスター・リレーションズ
シニアコンサルタント 佐原 珠美

最近、IR活動における「統合報告」の重要度が高まっています。
企業価値をより深く理解してもらうために統合報告に既に取り組まれている企業様も多いのではないかと思います。

現状、日本の多くの企業はアニュアルレポートなどを主とする財務情報と、CSR報告書やサステナビリティ報告書など主とした非財務情報を合わせて1冊にしている、というのが現状なようです。
しかし実際のところ、統合報告はどうあるべきなのでしょうか。

真の意味での統合報告を実現するには、そもそもなぜ財務情報と非財務情報を「統合」することが必要なのか、そして企業としてどのように取り組むべきか、について考えてみる必要があります。

本コラムでは、統合報告が検討されるにいたった背景、統合報告の本質から、「企業の価値創造プロセスが伝わる」統合報告への取り組み方について、連載形式でご紹介します。

第1回目の今回は、統合報告の背景についてご説明します。

なぜ報告書が変化してきたのでしょうか?

-企業価値に占める見えない資産の割合が増えてきました。

そもそも企業の報告書といえば、財務情報のみを開示するものでした。しかし時代を経るにつれ、特許やブランド価値、経営者の資質、従業員の技能などといった、直接数字として表れない無形資産(見えない資産)が企業価値に占める割合が大きくなってきました。そうなると財務諸表だけで企業価値を十分に分析することが難しくなり、財務以外の情報が企業価値や、中長期的な成長性を測るための要素として重要視され始めました。

-企業を取り巻く経営環境も急激に変化してきました。

経済がグローバル化するにつれ、企業間の競争が激しくなると、企業が安定的に利益を出し続けることが難しくなってきました。また、リーマン破綻に端を発した世界金融危機、エンロン会計不祥事など、企業経営の継続において重大な危機となるリスク事象が頻発するようになりました。一方で、東日本大震災やタイにおける洪水などの自然災害への対応策や、環境との共生、資源・エネルギーの有限性への適応、さらには循環型社会の構築が求められるようになってきています。
こうした状況からも、過去の財務情報だけでなく、起こりうるリスクを予測した事前の対応策や事業戦略、首尾一貫した中長期の経営方針、将来見通しなどの非財務情報が企業の持続可能性を説明するうえで極めて重要となってきたのです。

では、なぜ統合報告が検討され始めたのでしょうか?

-情報の散乱を解消するためのツールが求められるようになりました。

経営環境や情報開示のニーズが変化するなかで、企業は財務、非財務の両面で開示情報を増やしてきました。しかし、開示情報の量が増えて複雑性が増したうえに、情報が相互に関連づけられていないため、企業価値を読みとることがかえって難しくなってしまいました。
情報の散乱を解消するため、最も重要な要素を選択・整理し、財務情報と非財務情報を関連づけて簡潔に企業の持続可能性を理解できる新たなコミュニケーションの方法が求められるようになってきました。

IIRC(国際統合報告評議会)の統合報告とは

2013年12月、IIRC(国際統合報告評議会)が、参加団体(※1)による審議やパブリックコメントの検討などを経て、統合報告のフレームワークを公表しました。

IIRCが提唱する統合報告とは、企業が、財務資本提供者に、長期にわたって価値をどのように創造していくかについて、財務情報と非財務情報を関連づけて報告するものです。 報告の内容としては以下の8つを、7つの基本原則に従って記載するとされています。

統合報告の中核となるのはビジネスモデルです。
つまり企業が社会からどのような資本(財務、人的、製造、知的、社会関係、自然の各資本)を利用しながら事業活動しているか、その結果どのような価値を付加した商品、サービスを社会に提供しているか、というビジネスの仕組みです。

統合報告では、そのビジネスモデルが中長期的に持続可能かどうか、について伝えます。中長期的に事業環境が変化するなか、組織自体も、利用できる資本も変化するし、機会とリスクが表裏一体で待ち構えている、そういう状況をすべて踏まえたうえで企業は持続可能なのか、について伝えるわけです。

とすると、 報告する内容としては以下のものになります。

  • ・「企業はどのような事業を行っているか」
  • ・「中長期的に価値を維持、創造するためのビジネスモデルはどのようなものか」
  • ・「目指す姿はどのようなものか」
  • ・「今後事業環境はどのように変化し、どのようなリスクや機会に遭遇する可能性があるか」
  • ・「リスクや機会に対応するために、どのような戦略を策定し、達成するためにどう資源配分を計画しているか」
  • ・「目指す姿になるために企業活動を支える体制は整っているのか」

では、実際にどのような企業がどのような形で統合報告に取り組んでいるのでしょうか。
次回の第2回目では日本の統合報告の現状を考察していきたいと思います。

(※1)IIRCへの参加団体とは
IIRCは「統合報告書」のフレームワークの協議・開発を目的とした非営利組織で、国連が関わるプロジェクト関係者や、国際会計基準審議会(IASB)、国際会計士連盟(IFAC)の関係者、民間企業・投資家・会計士団体・行政機関などが参加しています。日本からは、東京証券取引所や日本公認会計士協会からメンバーとして、また民間企業としては武田薬品工業、昭和電機、新日本有限責任監査法人、フロイント産業が参加しています。

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