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コラム

企業と投資家の建設的な対話
2)コーポレートガバナンス・コードとは ~日本企業の「稼ぐ力」を取り戻す~

2014/11/21

野村インベスター・リレーションズ
取締役 高田 明

今年6月、政府の成長戦略の一環として策定することが決められた「コーポレートガバナンス・コード」。金融庁と東京証券取引所によって有識者会議が設置され、策定に向けた議論が現在着々と進められています。

コーポレートガバナンスに関する議論は以前から延々と行われてきているため、「またか」といささか食傷気味という印象を持たれる方も多いのではないでしょうか?しかし、今回は今までの議論とは異なる点がいくつかあり、高い関心が寄せられています。

「企業と投資家の建設的な対話」の第2回目となる本コラムでは、コーポレートガバナンス・コード策定を巡る議論の動向についてご紹介します。

コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議

平成26年11月12日、第6回「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」が金融庁の会議室で開催されました。本会議はコーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方について提言を得ることを目的として金融庁と東京証券取引所が開催しているものであり、今回も第5回までの会議と同様、傍聴者が200名を超えるという熱気溢れる中で各界の有識者による活発な意見のやり取りが行われました(次回は11月25日に第7回会議が開催される予定)。
最終的には有識者会議においてコーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方が取りまとめられた後、来年2月頃に東京証券取引所によりコーポレートガバナンス・コードを踏まえた新しい上場規則がパブリック・コメントを経て制定される予定です。

従来のコーポレートガバナンス議論

いままで、上場会社による不祥事が明らかになるたびにコーポレートガバナンスをテーマとした議論が沸き起こり、毎回それぞれの立場の人からのそれぞれの主張・意見が同じように繰り返されてきていたというのが従来の状況であったと思います。

しかし、冒頭で申し上げた通り、今回は傍聴者数がとても多いことが示すようにいままでのコーポレートガバナンスの議論とはちょっと違う、という点が2点あると考えています。

従来と異なる点1.
“日本企業の「稼ぐ力」を取り戻す”という目的

その一点目は“目的が先に決められている”ということです。「コーポレートガバナンス・コードを策定する」ということは今年の6月24日の”「日本再興戦略」改訂2014-未来への挑戦-”の閣議決定において決定されましたが、策定の目的は“日本企業の「稼ぐ力」を取り戻す”ため、とされています。
つまり“「稼ぐ力」を取り戻すためのコーポレートガバナンス”はどうあるべきかをコードとして示そうということが目的で、その目的がまず明確にされています。「稼ぐ力」を取り戻すということに反対の人はいないのでこの点メンバーは同じ方向を向いています。

いままでコーポレートガバナンスの議論がエンドレスになされてきた理由の一つに、コーポレートガバナンスの体制と企業価値の間に相関関係があることを示す、誰もが納得する明確なデータがなかった、ということがあります。仮にコーポレートガバナンス体制をこうすれば企業価値が向上する、という実証分析データが存在すれば、企業価値を向上させる体制への反対意見は出しにくく、ここまで議論が堂々巡りになることはなかったのではないでしょうか。

今回は“コーポレートガバナンス体制は企業価値の向上に影響を与えるのか“という部分の議論をある意味超越して、「企業価値を高めるようなコーポレートガバナンス体制を示す」という目的を打ち出しているため、より意味のある議論が行われるのではないかとの期待感が高まっています。

従来と異なる点2.
”comply or explain”の原則に基づく選択権

もう一点は「法令」ではなく、「コード」を策定しようとしているということです。
会社法など法律によってコーポレートガバナンスの体制を規律しようとする場合、当然ですが全員が遵守する必要があり、現実に実行可能なレベルのものにせざるを得ません。
しかしコードは法律ではないので、”comply or explain (原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)”の原則に基づき、受け入れるか、あるいは受け入れず説明するという選択をすることができます。
コードに賛同するのであれば受け入れればよいし、別の考えがあって受け入れない場合はその考えを説明すればよい。強制的に適用されるルールではないため、コード自体は全ての会社が遵守可能ということを前提に策定する必要がなく、企業価値を高めるということを強く目指したより大胆なものとすることが出来ます。
そのため、「稼ぐ力」を取り戻すためには従来の議論とは異次元のものにすべきである、現状と不連続すぎるとしてコンプライしないならエクスプレインすればよいのだから困る企業はないはずだ、自社の体制についてエクスプレインできないのは経営者として失格である、という意見も出されています。一方そうは言っても現実を見据えた、あまり極端すぎないものにすべきであるという意見や、コンプライする会社が極端に少ないようなコードはそもそもコードとしては適切ではないのではという意見も出ています。

コーポレートガバナンス・コードの基本原則(事務局原案)

第6回の会議で、事務局よりコーポレートガバナンス・コードについて、第1章 株主の権利の尊重と平等性の確保、第2章 株主以外のステークホルダーとの円滑な協働、第3章 適切な情報開示と透明性の確保、第4章 取締役会等の責務、第5章 株主との対話、の5つの基本原則がたたき台として提示されました。

参照:金融庁「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方 に係るたたき台(一部)」
http://www.fsa.go.jp/singi/corporategovernance/siryou/20141112/01.pdf

このうち上場会社の取締役会の責務については、(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと、(2)経営陣幹部による適切なリスクテイクをサポートするような環境整備を行うこと、(3)独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高いモニタリングを行うこと、とされています。
取締役会に関して、会社法上の定義とは別に、企業価値の向上のために本来果たすべき役割がこのように明記されたのは初めてではないでしょうか。

11月12日時点で、「政策保有株式(いわゆる持合株式)」、「取締役会の組織」に関する事務局案は提示されておりません。この二つのテーマについては、「稼ぐ力」を取り戻す、という方向では一致しているメンバーの間でも意見が大きく分かれています。「政策保有株式」が企業価値向上にどの程度貢献しているのかの合理的説明、議決権行使についてどこまで記載することとするのか、社外取締役の人数・構成比をどこまで求めることとするのか、最終案がどのようなものになるか注目されます。

コーポレートガバナンス・コードを受け入れる会社が対応すべきこと

コーポレートガバナンス・コードを受け入れる企業が、策定し公表しなければならない主なものとして、原案では、以下が挙げられています。

・中長期的な資本政策の基本方針
・経営理念、経営戦略、中期的な経営計画
・コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
・経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続き
・経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続き
・株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組み等に関する方針

受け入れる企業は準備が必要ですが、これらは本来コーポレートガバナンス・コードとは関係なく既に有していて当然という事項かもしれません。

このように、日本企業がコーポレートガバナンス・コードを受け入れて実行していく過程で、中長期的な収益性・生産性が高まり、雇用機会が拡大し、賃金が上昇し、企業に対する投資のリターンも高まりその果実が最終的に国民に還元され、経済活動の真の好循環が実現することが期待されます。

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